コラム・夜明け前

本性はオタクだったのかもしれない。たしかに地元の高校ではいっぱしの読書家で通っていたのである。しかし、本性はオタクだったのかもしれない。中学時代はアニメオタクだった。だが、周りにそれを許す空気があった。『学園戦記ムリョウ』や『カレイドスター』といった番組は、人格形成に大きな影響を与えた。
高校に入学して、アニメから離れた。理由は、魅力的な番組がなくなったからだ。ただし、地元で放送される全日帯アニメ(深夜アニメの対義語)に限っての話である。アニメの主戦場は夕方から深夜に移っていった。いまでも語り草になる、2004年秋、舞―HIME、ローゼンメイデン魔法少女リリカルなのはの3番組鼎立……美少女ものがアニメのメインストリームになっていった。
おもに独身男性を対象とした美少女もの……別の言葉で言い換えるならば萌えアニメが、シーンの中心となる状況は、あきらかに異常である。そして京都アニメーションの台頭などにより、萌えアニメの隆盛はいまも続いている。ここ10年ほどは萌えアニメの時代といってもよく、女の子ばかり出てくるアニメ、女の中に男がひとりというアニメが最も人気を得ている今の状況は異常事態である。
僕は大学に入学するまでは、こうした美少女アニメに拒否感を持っていた。美少女アニメはアニメの本道ではなく、そういったアニメがもてはやされる現状に違和感を覚えていた。もっといえば、テレビアニメの主流は夕方アニメであり、深夜アニメは傍流にすぎないと思っていた。しかし、上京し、一人暮らしをはじめ、大量の深夜アニメをさばくに連れ、この「異常事態」に順応していった。アニメのゴールデンタイムは深夜だ。媚びたデザインの美少女キャラクターにも拒否感を抱かなくなっていった。むしろ、日本テレビの火曜深夜枠や、フジテレビの「ノイタミナ」枠など、深夜アニメとしては例外的に一般層をターゲットとした番組群に距離を置くようになった。

 深夜アニメバブルに幻滅しアニメから距離を置いていた僕。しかし、大学入学が近づくにつれて、アニメに向けて気持ちが高揚してきた。上京したらすべての番組を見てやろうと思った。やはり本性はアニメだったのかもしれない。
 二〇〇七年四月のアニメ新番組の数は史上最多だった。前年に勃発した深夜アニメバブル(という名の粗製乱造)の余波を受けてのものだった。アニメバブルは続いていた。また、『涼宮ハルヒの憂鬱』『コードギアス 反逆のルルーシュ』といったビッグタイトルが生まれ、少しはアニメに興味を持つ層が広がりつつあった。僕はハルヒ以後、ギアス以後の深夜アニメを生き始めた。
 たしか大学の入学式が四月一日の日曜日だったと思う。『ハヤテのごとく!』の第一回が観られなくて悔しかったのを覚えている。この時点で録画機は手に入れていない。
 とりあえず、手当たりしだいに新番組を観てみた。しかし、ほとんどの番組を最後まで観通すことができなかった。僕は気に入った番組を何回も繰り返し観るタイプだった。都会の氾濫する深夜アニメの数に対応できなかったのだ。