南関東競馬・思いつくままに(第一回)

わたしは上京してからしばらくは中央競馬中心だったが、いつのまにか地方競馬にのめり込むようになった。平日は南関東4場に行ったり、オフト後楽園に行くことが多くなってきた。
すでに大井・川崎・船橋・浦和の全競馬場の開催に行ったことがある・・・・・・のは、何の自慢にもならないか。
しかも南関全場踏破は大学の後輩(あでぃす君)に先を越されてしまったし。
とはいえ、最近は平日暇ができると、ふらふらと高い交通費を払って南関の競馬場に足を運んでいる。
「競馬は長くやって初めて面白い。五年や六年のキャリアで競馬が面白いとは、私は言わせない。」とは、作家でありギャンブラーでもある浅田次郎さんの名言である。(『競馬どんぶり』幻冬舎アウトロー文庫より引用。)
そういった見地に経つと私は未熟者も未熟者である。競馬を見始めてからようやく10年経つ程度だし、馬券を本格的に買いだしてから5年にも満たない。
地方競馬観戦歴はそれ未満である。そんな人間に地方競馬の紹介文が書けるかどうかわからない。しかし、それなりに考えが溜まってきたので、そろそろ書く段階が来たのではないか、と思うのである。
わたしは基本的に大井競馬が主戦場だ。23区内に住んでいるから、ホームだという意識がある。それに大井は開催数が多い。決して行きやすくはないが、馬券の売り上げには最も貢献しているはずだ。
それから川崎。その次が浦和。船橋には数えるほどしか行ったことがない。開催数が少ないのと、ナイターがないのと、交通の便が悪いのが原因だ。
基本的にわたしにとって南関東競馬といえば大井と川崎で、浦和はローカル競馬という認識、船橋はあまり馬券を買わない。だが、こんなわたしであっても、各競馬場に対する雑感は書ける。

大井競馬場について(その1)

御存知の通り、東京23区に所在する唯一の競馬場である。所在地は品川区。平和島競艇から近い。
アクセスは、いろいろな手段がある。
まず、浜松町から東京モノレールを使う手段。本稿ではすべて自分基準で話を進めるが、私が住んでいる早稲田からは、地下鉄東西線大井町乗り換え→東京駅から京浜東北線→浜松町で乗り換え・・・・・・というルート、もしくは、高田馬場まで「馬場歩き」し、山手線で浜松町まで直行、というルートになる。早いのはいいのだが、交通費がいちばんかかる。
3月初旬の大井開催では、大井町から無料バスを使った。これだと東西線早稲田駅から乗り換えが一回になる。所要時間もモノレール・ルートとさして変わらないし、こっちのほうが安い。これからは大井町・無料バスルートを採用することになると思う。

なにより、正門から入場したほうが風情がある。
入場料は、南関は全場100円だ。
競馬新聞は大井町のバス停で買うか正門前のおばちゃんから買う。ちなみにわたしは西日本出身なので、横組みの馬柱しか受け付けない。すなわち南関でもブック派だ。
指定席は昔ながらの3号/4号スタンド、小奇麗なLウイング、そしてブルジョワだけが入れるダイヤモンド・ターンなどがある。大井だけ指定席のバリエーションが多いのだ。ただわたしはここの指定席は数回しか利用したことが無いので・・・・・・。

入場すると、まず予想屋をのぞきに行く。
そうだ、予想屋の説明をしておかなければならない。
予想屋とは、文字通り予想を売る人のことだ。
わたしがよく予想を買う予想屋さんは『夢追人』だ。ただ最近は『田倉の予想』に浮気しつつある。
『夢追人』の立地はいい。穴場にもパドックにも近い。閑古鳥が鳴く予想屋が多い中、夢追人の台には人が群がる。
一番パドックに近い台は『ザ・トップ』。その次が『半ちゃん倶楽部』。その隣に『夢追人』がある。
夢追人・高瀬さんの場立ちの特徴は、「出走全馬について最内枠から順に解説していく」という点につきる。
わたしは高瀬さんの場立ちを100回以上聞いているが、全馬解説をしなかったのはただ一回、川崎で、
先日中央にも遠征した「パンタレイ」という馬がどう考えても勝つだろう、というレースだけだった。
彼は、どんな買い要素のない馬についても詳らかに解説する。そして無印馬にたいして、「これは無印仕方ないですね・・・・・・」
というふうなコメントを残すのだ。そのコメントの裏に、「この馬は終わってしまった・・・・・・」という、
哀愁が漂っているのを感じ取ったのはわたしだけではないはずだ。
それにしてもどうして予想屋はあんなに馬を知っているのだろう。早い時間帯の下級条件の馬など、馬名からまったく
「馬キャラ」が浮かんでこないのだが、彼らはそんな無名馬にたいしても知識が豊満なのだ。
すべては、予想が仕事だから。
ちなみに、予想屋は馬券を買うことができない。

予想屋について、もう少し話をしたい。
何しろ、予想屋という稼業は地方競馬アイデンティティだと思っているからだ。
予想屋の金額は1レース200円、1日1000円である。はっきりいって最初から1日通しの「本紙」を買ったほうがお得である。
本紙を見せると、当回分の予想が書かれた小さな紙を渡してくれる。
余談だが、予想屋のスタンプさばきというものは、予想屋の見せ場であり、技だと思っている。
小さくて薄い紙にスタンプで予想を刻印するその様が、予想屋の立ち振舞・・・・・・魂みたいなものをあらわしてると思うからだ。
強く、バシッ! とスタンプを押す予想屋が主流を占める中で、ペッタン、ペッタンと一つづつ押していく『牛若丸』は異彩を放っている。
さて、スタンプの意味がわからない人は、予想屋のおじさんに教えてもらおう。
パドックと馬場状態から買い目を変える予想屋が多い。ただし『夢追人』だけはなぜか馬体を見ても買い目を変えない。
なぜだろう?

予想屋は買い目を公開する義務がある。
買い目のマスは5つ。つまり、流し買いでも最大6頭しか買えないのだ。
マスの埋め方は千差万別だ。毎回タテ目を切る予想屋。あまりタテ目を切らない予想屋。田倉さんみたいな「本命と軸を別」にすることがある予想屋

1/2 1/3 1/4 1/5 1/6

こういう風にして買い目は公開される。
買い目が的中した場合、そのマスを赤で囲む。
馬券の多様化により、予想屋は3連勝馬券にも対応するようになった。
その買い方も千差万別だが、わたしは買い目に関しては、全般的に田倉さんの考え方が明快だと思う。
ただ、予想に乗るか、自分を信じるかは、別の話・・・・・・

ううむ、予想屋について書き足りない!
これは日を改めて「番外編〜予想屋稼業〜」を書かなくちゃあ。
(つづく)