僕の読書遍歴

 小さいときから無類の本好きだったとか、小説が三度の飯よりも好きだったとか、江戸川乱歩とシャーロック・ホームズを全部読んだとか、そういった文学少年めいた体験はぜんぜんないですね。小学校のときに図書室の本を全部読破したとか、そういうことは決してなかったです。
 あ、でも一冊だけよく覚えてる絵本があります。『こんとあき』っていうタイトルで、小さな女の子がきつねのぬいぐるみと電車でおばあさんの所に行くって話だったと思うけど、その絵本を読んでるとすごくしんみりして泣きそうになるんです。あと本の中で砂丘の風景が出てくるんですけど、鳥取県に住んでたので親近感が沸きましたね。
 あとは『ぐりとぐら』とか『いやいやえん』とか、そういう古典的なものは読んだ覚えがあります。
 他の子と同じで漫画とゲームが好きな普通の子どもでした。漫画には強く反応した。日本の歴史は全て漫画で覚えました。マンガ日本の歴史とか〜のひみつシリーズとかなら漫画でも図書館に普通に置いてあるんですよね。そういう類の学習漫画系は全部読みました。ひとつ残さず読んだ。文学のほうは全然。江戸川乱歩怪人二十面相シリーズとか表紙が古すぎてそれが怖かったんですね。家にも実は少年少女向けの古典的な読み物とかたくさんあった気がするんだけど、そういうのはそれが置いてある部屋が暗すぎたし背表紙の文字もなんとなく怖すぎたんで読んでないです。
 児童文学って、カタカナにまでルビが振ってあるようなのもあるじゃないですか。あれが幼稚な気がして耐えられなかった。でも子ども向けの『三国志』だけは学校の図書室に置いてあってそれは読みました。
 本よりも図書室の雰囲気が好きで、背表紙を眺めるのが読むことよりも楽しかった。古い本の背表紙はグロテスクだと思ってあまり直視できなかった。今でも、どこにどんな本があったかをかすかに思い出すことができます。それは中学の図書室でも高校の図書館でも同じですね、毎日通ってたから。本自体はあまり借りなかったけどね。
 中学に入学してすぐすい臓炎で入院して、暇だったから松原秀行『パスワードシリーズ』とはやみねかおる『夢水清志朗シリーズ』を一巻ずつ順番に読んでいったんです。小説って面白いなぁと初めて感じたのはその時だったと思う。『パスワード』シリーズは途中の一巻だけ小学校のとき読んだことがあったんだけどね。親父がたまには漫画と攻略本だけじゃなくて普通の本も読めよって。本屋に連れられてって。とにかく中学の初めのときに入院してなかったら読書の習慣はついてないですね。
 それからあまり間を置かずに重松清の『エイジ』を読んだんですね。図書室に置いてあって、帯を読むと中学生の話だったから、自分と近い年齢の話なら面白いんじゃないかっていう。大人が読むような小説を読んだのは『エイジ』が初めてでした。重松清だったけど、青い鳥文庫から一気に飛びましたね。7年ぐらいたって、今までで『エイジ』は4回繰り返して読んでるけど、どうしても納得できない部分があの小説の中にあるんですよ。重松さんの本はけっこう読んだんですけど、どうしてもどの本にも首肯できないような部分がある。だから重松さんは反面教師です。『半パン・デイズ』と『ビタミンF』所収の『セッちゃん』だけは奇跡的にそういうイヤミな箇所がなかったけど。
 あと、中学時代に読んだ小説は、北村薫『スキップ』、山田詠美『ぼくは勉強ができない』、萩原規子『樹上のゆりかご』とかかなぁ。みんな舞台が高校ですね、アハハ。
 中学ぐらいまでは、普通に時のベストセラーも読んでましたね。
 本は学校で読んでましたね。家では読んでなかったです。家ではケーブルテレビでアニメを観るか録画した競馬のビデオを繰り返し観てました。それかずっとネットやってた。